日本成人矯正歯科学会

歯科技工士向けセミナー(第9回)抄録

有限会社田村矯正ラボラトリー 代表取締役 田村 和生
タイトル:低侵襲で治療効果の高い矯正技工装置の考察を経て ~診査・診断資料から矯正技工装置を考える~

矯正歯科治療において「診査・診断」は最重要視されている。そこにはひとえに初診時の患者さんの状態(状況)を理解するためと、治療後のゴールイメージを持つための「シミュレーション」があげられる。
そのうえで治療方針が決定し、歯科技工士に製作依頼が来ることになるが、チーム医療に大切な「情報共有」として「診査・診断」資料を読み込む力が歯科技工士にも必要となる。しかし現在の歯科技工士教育課程では、そこまでのスキルを身に付けるだけの教育はされていないように感じられる。そこには歯科技工士の教育年限が2年であることも影響していると思われるが「診査・診断」方法が担当歯科医師によって微妙に違う事もひとつの要因となっている。
弊社においては、オーストリア・(Vienna)ウィーン大学の故Slavicek教授が提唱していた診査・診断の手法を取り入れた、顎関節本来の位置であるRPバイト(Reference Position)とICPバイト(咬頭嵌合位)の差異を詳細に観察している。
矯正技工装置製作時には、それらの情報をもって患者それぞれの個々の成長を予測し上顎に対する下顎の位置を修正し、上下顎6番のⅠ級カップリングを目指すために、担当歯科医師と密な打ち合わせを臨床対応としている。
そこで今回は、非抜歯治療方針の「低侵襲」を目指した症例を報告したい。例えば混合歯列期における治療においては、成長過程であることから一次矯正治療中にも、治療方針の変更や治療の中止等に対応した治療方針は「低侵襲」と捉えている。
下顎位の修正という概念を取り入れた床矯正装置が促す変化は、口腔内にとどまらず顎関節関連の骨成長発育にも影響する。それらは患者の将来において顎口腔系に身体的健康を提供するものであると考えられ、超高齢化社会である現代には健康長寿の一因と考えられる。

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