日本成人矯正歯科学会

第31回春季学会セミナー 抄録

下地勲 (しもじ歯科クリニック 院長)
タイトル:骨性癒着Ankylosis(置換性吸収)の診断と対応

歯根吸収(root resorption)が生じず、順調な治癒が起きることが理想であるが、どうしても一定の比率で生じることは避けられない。
歯根吸収には1.表面吸収 2.炎症性吸収 3.置換性吸収の三つがある。この中で臨床で問題となるのは炎症性吸収と置換性吸収である。 以下、これらの吸収について説明する。

当歯根吸収は歯根膜とセメント質に小さな損傷が加わり陥没が生じることを指す。この陥没を吸収と呼ぶ。

1.表面吸収(Surface resorption)
 吸収は0.1ミリ程度と浅くて狭いため健全歯にもおこる生理的吸収である。周辺の歯根膜細胞の増加の結果、自然治癒することが多く、0.1mm程度の吸収であることからでセメント質に限局し象牙細管まで影響が及ぶことはない。
2.炎症生吸収(Inflamatory resorption)
 生じる条件としては、外的要素と内的要素の2つが考えられる。
  1.炎症生吸収の所見
   1)病的吸収(破骨細胞の活性化)
   2)欠損部=炎症生肉芽組織
   3) X線写真で透過像(診断は容易)
   4)4~8週間で発現
   5)速度は年齢と無関係に進行
  2.炎症生吸収のおきる条件
   1)外的要素(歯根膜、セメント質の損傷)
   2)内的要素(象牙再管内の感染)
 3.置換性吸収(replacement resorption)

吸収が象牙質まで到達している場合は、置換性吸収と表現される。この中で咀嚼などで癒着部(bony bridge)が解除されて(壊れて)周辺の歯根膜が増加することにより歯根が被われて治癒した場合、結果に対する診断名として一時性置換性吸収と呼ぶ。 大臼歯の移殖の場合、永続的に置換性吸収が起きたとしても20年以上は機能することが非常に多いため臨床的には問題とならない。しかも、その後、その部位に、新たにインプラントを植立することも可能である。

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