第27回秋季学会セミナー 抄録
タイトル:技工上手には「ワケ」がある
株式会社ティーズプレート 代表取締役 田井 詳子
歯科技工士免許を持つ私たちは全員技工のスペシャリスト!です。
作業模型上で装置を製作するのが日常の私たち技工士も、矯正歯科医療に従事する皆様と同じく、矯正後の患者さんたちの健康と幸せに、矯正技工を通じて貢献したい、そんな
思いで日々技工作業と向き合っているのではないでしょうか?
そのために単なる「技工物」ではなく「矯正技工装置」をつくる必要があると考えます。
私が初めて製作した技工物はリンガルアーチでした。そのリンガルアーチは学生時代の
実習の時とは見たことも聞いたことのない全く違う形をした「技工物」でした。「装置」は、治療目標に応じ、時に複雑な機能が組み合わされることがあります。そのため装置の特性や作用機序を把握し、適切に製作できる技工上手になるには、やはり数年の経験が必要です。
一方、装置の製作には必ず正確な作業模型や、適切な材料が必要です。実際の矯正治療においても様々な材料の特性を生かした、多くの装置が使用されています。出来ることな
ら、その材料を使用しさえすれば、誰でも同じ性能が発揮される矯正装置が製作できることが理想です。しかしながら、実際は私たちスペシャリストであっても材料の取り扱いの技術的要因や経験則によって差が出ているのが実情です。
今回、歯科理工学をベースとした矯正材料の特徴や技工材料の恒常的な取り扱いを見直し、精度の高い装置製作が可能な技工上手をめざしましょう。これは、技工技術や装置製
作の際のコミュニケーション能力の向上にも重要です。明日から、今日までとは違う技工上手といわれる「ワケ」を、それぞれが考えるきっかけの時間になれば幸いです。