日本成人矯正歯科学会

第27回秋季学会セミナー 抄録

くぼた矯正歯科クリニック 久保田衛

タイトル:マウスピース型矯正装置の適応と可能性 ~デジタルセットアップ作製のpoint~


近年、矯正歯科領域においてマウスピースを用いた矯正治療(マウスピース矯正)が急速に拡大しています。マウスピース矯正は審美的で装着時の違和感が小さいことから患者のニーズは非常に高く、今後益々発展していくことが予想され、世界中の大小様々なメーカーがこの分野に進出してきています。
マウスピース矯正には様々なタイプがありますが、現在主流の装置の一つであるインビザラインでは、デジタル化した咬合状態のデータから、専用のソフトウェアを用いて精密な3次元的治療計画を立案することで治療を進めます。この治療法はマルチブラケットを用いた通常の矯正治療の経験が少なくても治療ができ、複雑なワイヤーベンディング等の技術に熟達する必要がなく一見簡単そうに思える反面、診断および治療計画によって治療結果が大きく左右されるため治療の全過程を見通すことができる豊富な知識と経験が必要となります。

実際の臨床においては、どの程度の難易度の症例までマウスピース矯正で対応できるのか判断が難しいことが少なくありません。マウスピース矯正も他の治療同様に経験を蓄積することで適応範囲は広がるため、対応の可否を判断する際にかなりの個人差が存在します。マウスピース矯正では軽度の叢生程度の不正咬合しか対応できないとイメージされているかもしれませんが、装置の特徴を把握し正確な治療計画を立てることができれば、抜歯治療でも十分に対応できます。むしろ大臼歯の遠心移動や前歯部の開咬症例などはマルチブラケットよりも対応しやすい場合もあり、マウスピース矯正で大部分の症例を対応できるようになりました。

今回のセミナーでは、マウスピース矯正の中でもインビザラインで治療を行った症例において、インビザラインで対応できるか迷うやや難易度の高い症例を供覧し、各症例において診断や治療経過立案の段階で考慮すべき内容はどういうことかをお話し致します。

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